はせる

は・せる、馳せる

鳩を見る

 仕事中に鳩が見える。

 短時間強雨のようにザッと雨が降ると、会社のベランダの柵に、鳩が雨宿りに来ることがある。仕事中、見ていてなんとも心癒やされる光景だと思う。「創世記」を起源としてはいるものの、一般的にも鳩は平和を象徴するシンボルだし。
 ただ、視界の中に動くものが少ないとき、周辺視野に動くもの急に入ってくると、サッとそれに視線をやってしまう癖が私にはあるので、どうしても鳩を見てしまう。一度見て鳩だと確認した上でも、また動くと見てしまう。別に、鳩は悪くないし、糾弾したいとも思っていない。だって鳩だし。ねえ。鳩らは雨が止むのを待っているだけだ。止んだか、止んでいないか、を鳩が伺っている。なんとかして見ないようにしようにも、モニタの右上隅の、その先に鳩はいる。これでは周辺視野に入れない、ということができない。鳩は自己主張こそしないが、時々動く、見る、鳩だ。何度見ても鳩なんだ。あはは。

展覧会を、見たあとに

 ソール・ライター展アンコールを観に、久しぶりに渋谷を訪れた。この時期なので、入場日時の予約が必要になっていて、その所為もあってか会場は入場者数に余裕があった(観覧側からすればゆっくり見られるので嬉しいことだけど、今後のことも考えると心配だ。ちゃんと利益が出て、またいい企画を催してほしい)。ソール・ライター氏の写真は自分の写真への姿勢に近く、忘れかけていたことを思い出し背筋が伸びる。

 見終わったあとは、図録を買って、雑貨屋と本屋を巡って、喫茶店に入る。この日は単独行動。展示を見終わったあとに、映画とか他の予定を入れようかと前日に考えたけど、詰め込みすぎると感覚が混乱するので止めた。新しくオープンしたMIYASHITA PARKの様子でも見ようかとも考えたけど、まだまだ人が多そうでこちらも止めた。喫茶店でホットのミルクティーを甘々にして、図録のページをめくりながら反芻する。このぐらいが丁度いい。

その本、図書館にありますか?

 最近になってようやく図書館を利用するようになった。最初は絵本だけだったけど、週末に返却と借り出しにつきあうようになってから、私が読みたい絵本に始まり、ちょっと前から一般書籍も借りるようになった。それまでは、基本的に読みたい本は買うものだったけど、図書館を「長い立ち読み」「全部読める試し読み」みたいにと考えると、借りて読み進めてあまり気分が乗らなければ返せばいいんだと姿勢も前のめりになる。もちろん、読んでみて手元に置いておきたいと思ったなら、そのときは買えばいい話だ。

 台東区の図書館はインターネットで貸出状況を調べられるので(全国的にインターネットを活用している場合が多い)、誰かがオススメしていた本とか話題のタレント本が気になれば、図書館に収蔵されているかを簡単に確認できて便利だ。PCのChromeでは、Amazonの製品ページに図書館の貸出状況を表示してくれる拡張機能「その本、図書館にあります」があるので活用されたし。

chrome.google.com

念を送る

 神田駅で山手線から中央線に乗り換え、座席に座る。今朝はやや空いていた。隣も目の前も空席……と、私の視界の中に虫がいた。目の前の座席の下に少し大きめの蛾。羽は傷ついていて、座ったまま暫く観察しても動かないので、もしかしたら死んでいるかもしれない。かわいそうに、こんなところで……と思っていると御茶ノ水駅に着いた。総武線からの乗り換えで人が乗り込んでくる。当然、目の前の座席にも座る。男性。蛾の存在には気づいていない。踏むなよ、踏むなよ……と念を送る。少し足が当たったように見えたけど、蛾は動かない。やっぱり死んでいるんだろうか。と、いうところで四ツ谷駅。「そこ、蛾がいますよ」と言えるわけもなく下車する。

 もしカブトムシやクワガタムシのような飼育することができる虫がいたのであれば、気づいたときに突いてみたりして生存確認をしていたと思う。生きていれば外に連れ出すこともできた(ブランクがあると躊躇するものだけど、最近、息子のおかげで再び虫を触れるようになってきた)。生存確認をしなかったのは、綺麗な蛾は存在するけど、それでも飼ってみたいとまでは思わないので、たぶんその違いだったのかも。ただ、生きていたとしたら申し訳ないことをした、と今は思っている。

アプローチホール

 ビルの1階アプローチホール(このビルではそう呼んでいるようだ)に大きめのソファ2つとサイドテーブルが2組、イスとテーブルが4組、背もたれのないソファが用意されている。今日はいろいろと用事があったのでカフェには行かず、丁度空いていた大きめのソファに腰を下ろす。周りを見渡すと時間潰しっぽいサラリーマンや、テーブルで食事をしているOLさんなどがいる。私の方を気にする人はいない。隣のソファには60代ぐらいの男性。サイドテーブルにメモやら水筒やらを散乱させ、背もたれに寄りかかって目を閉じている(眠っている?)。メモを盗み見られたりしてもいいのだろうか、と思いつつ、サイドテーブルが共用なので空いているスペースに私の飲み物を置く。男性が動く。盗み見する気はありませんよー、という念を出しつつ、サイドテーブルの荷物を少し寄せてくれるかな、と思ったりしたけど、全くそんなことはなかった。まあ、こちらには飲み物以上にサイトテーブルに広げるべき荷物は持ち合わせていない。本を取り出して1時間弱過ごす。私が席を立つまで、隣のソファの男性は再び眠りについたようで動くことはなかった。

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