「記憶の書架」に手をかける。古い写真を取り上げ、埃を払い、記憶を辿る過程で、現在に照らし合わせながら整理整頓する試み。今回は12年前、2010年4月3日(土)の写真。場所はJR新宿駅、たぶん山手線・総武線の15・16番線ホーム。階段の縁に腰を押しつけて、電車を待つ人々を撮った写真。
カメラはHASSELBLAD 500C、レンズはPlanar C80mm F2.8、フィルムはFUJICOLOR PRO 400、とメモしてある。夜なので、たぶん1/8~1秒程度の露光だと思う(F値やシャッタースピードはメモしてない)。
上の写真だけ他と比べてアングルが少し低く、本当は人の上半身のあたりを上下中央に置きたい。けど、そのおかげで階段壁の広告が入って、それはそれで面白い結果になった。ギャッツビー。
自分も同じ体勢で電車を待っていて、ふと冷静に自分の姿を客観視するように思い付いた構図(だったと思う)。最初は、到着する電車をブラすことがポイントと考えていたので、電車の動きと心の動きを重ねて「e-motion」というシリーズにしていた(beatmaniaの曲名をオマージュ)。1枚目に持ってきた構図では、人が前後に重なっているのも面白い構図だなあ、なんて思いつつ、撮ったのは3月から4月の間の3枚だけ。なぜ続かなかったんだろう。
新宿駅のホームは幅が広いので、ある程度ディスタンスが取れるからこの構図ができた、ということをなんとなく考えた。今、通勤で乗り降りしている駅のホームは印象として全部そんなに広くはないので、同じ構図を始めるなら上野駅で降りるしかないか。
こちらは2010年3月22日(月)。まだ寒い季節の写真なので、他と比べて服装にも違いが見受けられるのも面白い。あと、この写真だけ最大サイズを500pxとしてアップロードしていた。なぜだ。
こちらは2010年4月18日(日)。この写真では電車はなく、ホームの奥行きを感じられるのが楽しい。
フィルムが楽しかった
無自覚にフィルム写真を楽しんでいる頃でもあったと思う。
当時もフィルムの種類は少なくなり始めてはいて、(ポラロイドフィルムの件も含め)希少価値は高まっていくのだとなんとなく感じつつ、でもずっと続いていくともなんとなく思い込んでいたはず。当時120フィルムは5本で2,000円ぐらいの価格で、私の記憶にある最後の購入価格は4,500円ぐらいだった。今はPRO 400もPRO 400Hも生産終了・出荷終了しているようで、Amazonでは9,700円となっている。選択肢のひとつだったコダックはまだ生産しているような印象だけど、価格は同じぐらいだった。どちらも1本が2,000円ぐらいとなっている。
対比してデジタルが楽しくないということではないんだけど、フィルムで撮る感覚はやっぱり特別なものだったことを改めて感じている。フィルム購入から現像までのコストと自分の収入・支出を考えると、現状のままではなかなか戻りづらい状態になっている。そのことを改めて認識して湧き出した感情に、さて、どう向き合っていこうか。