はせる

は・せる、馳せる

その高揚は鎮まらない

 映画『アテナ』を観たよ。ある種の高揚は、感染して拡がっていく。

アテナ | Netflix

 画像はNetflix該当ページスクリーンショット

 ネタバレありです。


映画『アテナ』

アテナ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

2022年、フランス製作、97分、Netflix独占配信。

あらすじ

ひとりの少年が殺害された悲しい事件をきっかけに、激しい戦いの舞台と化したアテナ団地。その争いの渦中には、被害者である少年の兄たちがいた。

感想

 スタートから11分長回し。警察署前での沈痛な会見から、火炎瓶投擲、署内への車突入と、一瞬にして手が付けられないテンションまで張りつめるところで、一気に引き込まれる。カメラの視点がパトカーの車内から併走するバイクの視点へ移動して、また車内へシームレスに戻ったり、いつの間にかクレーンになっていたりする。初見では気づかないぐらいスムース。
 封鎖したトンネルの上から警察を待ち構えるところでタイトルバック。このシーンが秀逸、すごく格好いい。

 暴動を止めようとするアブデルが暴力に飲み込まれていく様が、この映画の基本線。暴力はエスカレートし、何のための行動であったのかがわからなくなる。
 面白かったか、はうまく判断できない微妙なところだけど、いま起こりうること、もしかしらたもう起こっていることとして、見て、知れて、よかった。ここでもやっぱり熱狂に浮かされた群衆の恐さを感じる。

 TBSラジオ『たまむすび』での町山智浩さんの紹介を聞いて視聴した。フランスの社会状況(移民、貧困、格差……)から分断された人々を兄弟それぞれが象徴しているようだ。

  • 格差と貧困にあえぐ弱者・被害者として末弟イディール(死去)
  • 現状に怒り、革命を求めて群衆を統率する三男カリム
  • 軍人で、家族や同胞を愛し、暴動を止めたい次男アブデル
  • 麻薬の売人で私利私欲と保身以外に興味がない長兄モクタール

 主な登場人物はアルジェリアからの移民3世となる上記の四兄弟と、機動隊隊員のジェローム、素性不明のセバスチャンの6人。セバスチャンは何者?「テロリスト監視リストに入ってる」と団地から中継しているリポーターが伝えていた。爆発物や武器の扱いに長けている様子。

 以下雑感。

  • 冒頭の長回しのことが多く取り上げられるけど、映像は全体的に美しい。
  • バイクと花火で機動隊を囲い込んで移動させ、予め撒いておいた可燃性の液体(ガソリン?)の上に誘導して火炎瓶で火を付ける。策士・カリム。映像的にも美しい。
  • 団地内を彷徨うジェロームの元に現れる馬に乗った人物は、冒頭でタバコを求めていたおじさん。何者?
  • セバスチャンが団地を爆破しようとしている、のにはもっと早く気づけたと思う。
  • 最後に挿入される映像は、ケルト十字のタトゥーによって、イディールを殺害したのは警察を装った極右の白人至上主義者たちだった、ということを示唆しているのだと思う。首筋を映すTPS風の視点が多用されているので、もしかしたらアテナ団地の群衆中に同じタトゥーの人物がいたんだろうか……と思って何度か見返したけど見つからない(まあ、当然と言えば当然ではある)。

 町山さんが語っていたことで、元のソースには辿り着いていないんだけど、監督のロマン・ガブラスがこの映画はトロイア戦争の『オレステイア』という悲劇を元にしている、とインタビューか何かで語っているらしい。
 あと、本作脚本に入っているラジ・リが脚本を書き監督して2019年に公開された映画『レ・ミゼラブル』がある。この暴動と同じ状況を警察側の視点で描いているようで、見てみたいと思った。

予告編

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関連リンク


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※この記事の内容から体裁を整えてFlimarksに投稿しています。以降、基本的にFilmarksの方が最新の感想になります。

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