はせる

は・せる、馳せる

 結婚して引っ越すまでの8年間、阿佐谷北二丁目に住んでいた。この街は父親が20代の何年かを過ごした街でもあったようだ。

 思い返してみればその8年の間に駅前も結構変わった。バーガーキングはロッテリアだったし、南口のUFJ銀行は合併後北口の元東京三菱の建物に統合され、跡地は暫くして大きなマンションになった。その隣もマンションになり、1階はセブンイレブンとコイデカメラ、ソフトバンクショップ、2階は郵便局となった。東急ストアはイトーヨーカドーのスーパーになり、入り口の上にあった大きな時計は2階にジムが出来るときに撤去された。阿佐谷神明宮も大改修を行って真新しい本殿や舞殿になった。南口のロータリーは長い工事期間を経て地下に貯水槽が建造された。通勤時に通っていたスターロードでは新しいお店が開店する一方で、いくつかのお店は閉店していった。

 その一方で変わらないものもたくさん思いつく。
 女の子や友人らのために食材を買い出しに行った西友。最寄りのローソン、イエローキャット。お世話になったクリーニング屋、例大祭の御神輿に誘ってくれた床屋。緑の多い、馬橋稲荷神社。

 田舎の生まれであるから……というわけでもないのだろうけれど、緑の多いところが好きだ。阿佐ヶ谷はビルはそれほど多くもなく、並木道や緑の多い神社が点在している。神明宮の改修後もそうだ。月に一度神社にお参りをしたあと、コンビニで買ったパンと野菜ジュースを馬橋稲荷の境内で食べるのが恒例になっていた。これを思うと今も少し淋しくなる。

馬橋稲荷、雨。

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